あまりにもキリスト教万歳が強すぎて、無宗教の私には全く面白さがわかりませんでした。思想の自由は大事だと思うけど、いつの時代も争いの元になっているのは宗教や思想の違いとそれぞれの傲慢な自己主張なんだよな。懺悔しながら人を殺してる時点で、宗教ってよくわからん。

脚本、と演出が盛り上がりを妨げている、キャラともに演技は最高です。作品が死んでいる、、、

1926年革命後のメキシコが舞台です。カイエス大統領が教会権力に反する政策を実施したためカトリック教会と政府の関係は悪化。新しい憲法に抗議した組織「ＬＮＤＲ」宗教自由同盟とのちに武装したクリステロが一緒に戦う彼らの物語です。原題「CRISTLADA」カイエス大統領はメキシコの威厳のため外国生まれの司教や司祭は国外追放にし政府を批判する聖職者は５年間刑務所に収監します。カイエス法に対し撤回を求め署名や不買運動で経済に打撃を与え政府を倒そうとします。聖堂に軍隊が乱入し中の人びとを銃殺します。カイエスは怪物です。我々も立ち上がり抵抗し反乱しよう「信仰の自由を尊重しろ！」と叫びます。「自分が信じることを守らなくてはいけない」「自由のために死ねる」クリステロを手ごわい軍隊に変え指揮を執るエンリケ将軍をアンディ・ガルシアが演じます。１人で14人を殺しカトルセ ( 14の意味 ) と呼ばれ700人の武装労働者を率いるビクトリアーノを「フォースの覚醒」オスカー・アイザックが演じています。キリスト像が焼かれた時に登場するシーンがカッコいい。神父を目の前で銃殺されクリステロに志願する少年ホセも重要なキャラです。ホセが銃殺のため連行されるシーンはゴルゴタの丘へ向かうキリストのようです。女性ながらクリステロに協力するアドリアーナもいます。腰に銃弾を巻いて運びます。軍隊に首を吊られるも「君たちを許そう」という神父にキリスト教の赦しがあります。「キリストに命を捧げる以上の名誉はない」しかし子供の命まで失うエンリケは「なぜ神は助けてくれない？」と失望します。クーリッジ大統領時代のアメリカも介入してきます。石油の採掘権欲しさに軍事支援もします。以下ネタバレあり1929年最後はメキシコとローマが和睦し協定を結んだことで事態は解決し平和と安定が訪れます。国中に教会の鐘が自由に鳴り響きます。ホセやビクトリアーノやエンリケの死はなんだったのか？と虚しくもなります。神の考えがあり起きたことなのか？「暴力では解決しない」というせりふもありました。エンドロールで実際のクリステロたちの写真が見れます。

メキシコでの「クリステロ戦争」（1926ー1929年）、新大統領カイエスがカトリック教会を弾圧する政策をとったことから始まった。最初の頃は、神父が反乱軍の指揮を取るなど、まとまりに欠けていた集団をエンリケ将軍が率いるようになってから、抵抗も力強くなってくる。将軍を演じるのは、、存在感抜群のアンディ・ガルシア。しかし、将軍の信仰は（形だけで）強くはない。これに対し、最初は教会の老司祭（ピーター・オトゥール）にいたずらをする子供だったホセは、司祭の教育もあって次第に強い信仰を持つようになり、志願してクリステロの軍に加わって雑用をこなし、将軍に認められていく。この二人の対比が物語の軸となっているようだ。戦いの合間にホセは政府軍に捕らえられて、懇意だった市長が「形だけでよいから信仰を諦める」と言えば釈放されるぞととりなしても、頑として断る。投獄され、拷問されても信念を曲げない。このあたり、遠藤周作の「沈黙」（スコセッシ版）とかぶるなあ。エンリケ将軍が居所を突き止めて助けに向かうも、到着したのは少年が処刑された直後。エンリケは「神は一体何をしてくれた？」と嘆く。しかし、信仰の問題だけでことはすまない。メキシコの油田で石油を調達したい米国は、自国の利害が絡むので、新しい大使を送って、何とかことを穏便に収めようとする。つまり、ある種の調停案を出してメキシコの内戦状態を終わりにする画策を行う。これが功を奏してカトリック弾圧は収束するが、信仰の強いホセも弱いエンリケも死んだ後のこと。70年後にバチカンによってホセたちが聖者のリストに加えられるが、穏健な無神論者のわたくしどもには、大した慰めにはなりませんのう・・・

メキシコにもキリシタン禁止令があったとは。可哀想なのは信者。自由を求める信者たちの戦う気持ちは判る気がする。しかし一方、よだれたらたら利権しか考えていない米国に仲介され、中途半端な協定で信者を見捨てるローマ教会。寄付でももらったんじゃないかねぇ。残虐行為でキリスト教を排除する大統領とその手下には、「地獄に落ちろ!」といってやりたい。しかし、、世界でカトリック教会が不況のために散々悪い事して来たのは周知のこと、ここもそういうことあったのではないかと、大統領にも少し共感してしまうのだが。神はなぜ救ってくれないのかに対する答えもいつも同じでがっかりする。複雑な気持ちにを持ちながら、カトリックに対しては憎悪心しか湧かない映画でした。助演の少年はキリストの再来のようで、涙が出てきました。

単なる宗教の物語かと思ったら全然違った。西部劇でもありアクションも素晴らしかった。エンディングでゴッドファーザーのガルシアと分かったときは感激した！

塩野七生「ローマ人の物語　キリストの勝利」を読んだ後に見たので、いろいろ深く考えさせられた。キリスト教は多神教の中に埋もれている時代には、彼らの神は多くの神々のひとつにしか見えない。彼らも「信仰の自由を認めてほしい」くらいのことしか言わない。しかし多数派になって権力を握ると、ある日突然態度を豹変させる。異教徒に向かって、「お前の信じている邪教を捨てろ」とはっきり要求し始める。これを拒めば、待っているのは追放か死あるのみだ。ただしキリスト教の側にも言い分はあるだろう。古代ローマにあこがれる人は多いが、当時の特権階級はごく一部にすぎず、多数は平民で、大多数は奴隷か解放奴隷だった。現世に希望を見い出せない彼らにとって、ローマ世界を悪と断じ、来世の幸福を説くキリストの教えは魅力的に映ったことだろう。この映画を見て感じたのは、キリスト教はギリシャ・ローマの遺産をごっそり乗っ取ったのではないかということ。たしかにキリスト教は、古代ギリシャ以来の学問を異教だとして否定する場面もあったし、この映画はその側面を主に描いている。しかし長年蓄積された数々の遺産を受け継いで、キリスト教に取り込むこともやっている。上記の塩野氏の本には、そのことがイヤというほど紹介されている。この作品は世界史に埋もれた悲劇のひとつに見えるが、見かけの地味さに惑わされてはいけない。一神教の原理が世界中を覆いつくそうとしている現代を生きる我々には、一度は見ておいたほうがいい重要な映画なのだ。これから国際社会で活躍する若い世代には、特にお薦めしたい。

歴史上の、残念は黒歴史を垣間見た気がしました。見て損は無い映画と思います。